四国日記紀行
2001年9月9日(土)
夏といえば夏だが、灼熱の日々も去りゆき、
熱いといえば熱いのだが、部屋のクーラーをOFFにして、戸を開け放ち、
過ぎ行く夏に、チョッピリ甘い思いを馳せる余裕のある季節。
そんな昼下がりの季節、オネアミスの翼を見た後、四国に出かけることになった。
高速道路の中国道に乗って、明石大橋→淡路島→四国と言うルート予定。
だが、うっかりボーっと運転してて、明石大橋分岐点を素通りしてしまう。
文字通り「拘束道路」な状態に、惰性で車は明後日の方向へと突き進む。
なんか訳が判らない有料道路やら、トンネルやらを抜けると、大きな橋が見えた。
どうやら助かったようである。
淡路島の真中辺のパーキングにて、トイレットするため停車。
だが、その数分の間に、森林地帯のど真ん中な此処で、蚊に喰われまくる。
しかも藪蚊なんですんごく痒い。
んなこんなで、四国には無事ではなく、かなり痒い状態で到着した。
徳島にて深夜未明のカレコレを終え、
昼間にてネット上の地域限定四国方面チャットにて情報を仕入れた、
RsCafeなる、女子高生がいっぱいいるらしいカフェがあるらしいんで、
其処に行くことにした。
ところでCafeってなんやろ?
深夜3時までやってるんで、ただの喫茶店ではなさそうやし・・・
だが、しかし、現行の日本語では表現できない素晴らしい場所であることは
女子高生が、いっぱい常駐しているらしいことからも明らかだ。
ビバ!カフェ!料金体系はどないなんかが気になる29歳だった。
で、徳島駅前まで来てみるも、皆目検討つきません。やめ決定。
おいらの女子高生に対するあまりの執着の無さに割と愕然。
っていうか腹へったので吉野家タイムにする。
で、そのままで帰るのも癪。
しかも四国まで来て吉野屋喰って帰るってのが輪をかけて癪になったもんで、
おもむろに「太平洋が見たくなった」事にしといて、
台風のメッカ、そしてサンクチュアリ、いやそれ意味違うよ、
「しおの岬」を目指すことにした。
注意だポン。その1
んでもって南に南下するも、道路標識にゃ、
阿南・室戸方面としか出てこないのに気付き、
そやそや、「しおの岬」は高知県の西側の端に飛び出てる
アレだよねん。と勝手に解釈するも、今書き書き中に地図を
調べるも、そんな岬あれへんでよ?しおの岬って何?
かなり壮大な勘違いの予感。
あぁ調べるの怖い、自分の脳に裏切られた気分。
でもって、走り屋に煽られたり、抜かされたり、
タイヤを鳴かせてみたり、山の谷間のローソンで
おにぎり食ってみたり、そのローソンの前で最近の恥を知らないと評判の
不良日本人(若人限定)のごとく座り込んで食ってる最中、ふと後ろを振り向くと
ローソンの窓、看板などなどのあらゆるヒカリモノに隙間無く、ぎっちりと
かめむし(龍野名:ガイザ)がへばり付いているのを目撃したり、
波の音が聞こえ、海が見えると、ついつい悪しき習性、そう、遺伝子レベルでもって
記念撮影してみたりしながら、室戸岬に午前4時頃に到着する。
夜は、車の凹みや経年変化を覆い隠す。闇万歳
台風前日っぽい不気味な波の音と、街灯一つ無い暗闇。
前方の闇に目を凝らすと、ぼんやりと浮かび上がる海、押し寄せる海。
そして、生ぬるい夏の大気を切り刻む、台風の風。
まさに最南端にある、観光組合前の駐車場に車を止めて、浜辺に下りようとするも、
割と暗く、台風の高波にさらわれるのも、そして季節はずれの海水浴も
したくなかったので、日の出に備え、車に戻って仮眠を取ろうと努力するも、
隣に車を止めたRVなあんちゃんが、何やらガサゴソ気味なんで、
寝れなかったが悔しいんで寝たふりをかます。
んな感じで時間を潰していると、空が青白くなってきた。
来た来た!とばかりに浜辺に出ると、先ほどのあんちゃんが、
かなり前の方の岩の上にすでに三脚スタんばってた。
長尺物を持ってウロウロしとるから、てっきり
21世紀のスキッオイドフィッシングマンかと思いきや、カメラ小僧だったとは・・・
意表を突くも、社会的容認レベルはそんなに変わらんな、いやはや。
などと考察していると。空が明るくなってきた。
が、燃える朝焼けは、台風な雲に隠れて台無しな感じ。
だが、カメラ小僧はちがった。
位置を変え、ポジションを替え、シャッターチャンスを逃さない覚悟。
どうやら東映マークを、個人的にコレクションしているようだ。
でもこれって、伝説のビッグウェーブ待つサーファーと一緒じゃん。
ひょっとしてかっこいいかも、ロマンチックで女の子にモテモテやも、羨ましいかも、
などと、脳タリンな妄想が支配する四国最南端の早朝であった。
おもわず波打ち際の一番高い岩に登り、腰に手を当てる。男なら皆そうする筈だ。(統計データ無)
弘法大師さんが引き篭もった場所だそーです。ヒッキー発祥の地。てなわけで、鳴門とさようならする。
たしか、そーいや日本書紀で、踊り見たさにヒキコモリ解除した神様がいたよね。たしか。
うーん明るくなったし、車内サウナ状態だし、それ以前に、
仮眠を試みた際の、車中窓全開で靴&靴下脱ぎ脱ぎ放題の際に加え、
日の出鑑賞の際に体中、蚊に食われまくったんで痒くて寝れない、
特に、足の指の間接と踵。ここはやめてくれと懇願するよ。蚊に。
そうそう、話をまとめるに、結局、痒くて寝れそうにないんで、
落ち着いて痒みと対峙できるような宿を求めて、出発することに。
海沿いに西へと向かうと、そこは安芸だった。
そう、阪神タイガースのキャンプ地で(としてのみ)有名な場所だ。
で、落ち着ける宿を探しながら車を走らせていると、
奇妙な写真付きの名所看板が・・・
江戸っぽい平屋の上に巨大な針時計、その名も「野良時計」
取り合えず行っとこう、本能がそう囁いた。
それにこんな感じの建物があるんやったら、純和風で古風で美人姉妹が
経営するような感じの温泉旅館が見つかるやも・・・で、現場到着。
辺り一面の田園風景に、その所有者のであろう規格物鉄筋ハウスが
ぽつりぽつりと建ち、遠くには低い山々、のどかなポカポカな陽気、
用水路にそって蝶がひらひらと。
んな中に違和感をかもし出すような、いやそうでもないような、
なんとも表現し難い。そんな「野良時計」がそこにあった。
「野良時計」の意味は各自勝手に調べてもらうとして、
まぁたしかに納得の名称。でもセンスはあるよ、名づけ親。
で、隣に土産物屋があるので取り合えず確認のため入店。
そこには、エコロジカルブームな感じの(人が焼いたような)焼き物と、
そこにもっとも在って欲しくなかった、阪神グッツが、在った。
アンチ阪神とかいうのではなく、最果ての四国にて、見たくない日常が、
スポーツ紙のごとくズカズカと乱入された気分に萎える。
ここには、求めているものはないと見限ったおいらは、出発した。
札幌の時計台と、どっこいな存在感。両方見た人には判って貰えるよね、このニュアンス。
で、海沿いに車を走らせるも、先ほど頭に浮かんだ、
「山の谷間の秘境な温泉旅館+美人姉妹」というシュチュエーションに妙に欲情を駆りたてられ、
基本的に海よか山の方が好きな事もあり、おもむろに、何の考えも無く、
海から離れるように90度ターンした。
で、いきなり出てきたのが「竜馬歴史館」。なんともいえない喪失感にとらわれる。
維新の獅子達が、典型的な客寄せパンダ的扱いを受け、蹂躙されているであろうと予想される。
後でしらべるに、浪人行いや違った、蝋人形だって・・・
当然そんなものには目もくれず、山奥へと向かう。
と、あるある温泉。カーナビに続々と温泉登場。
てな訳でずんずん北上していると、「龍河洞」ってなかなり涼しげな名前の
保養施設があるらしいと、看板より徹夜あけのおいらの脳は勝手に推測し、
そっちゃに向かうことに決定した。
だが、其処は、土産物屋のアーケード街が形成された只の古びれた観光地だった。
ね、眠い、そして腹減った・・・そんなアナログな悲しみを土産物屋のおばちゃんや、
観光地価格設定の食堂のおばちゃんや、通りすがりの観光おばちゃん達も、
当然、理解してくれるはずはなかった。
宿屋はどこだ!効率よく観光客から搾取するシステムである一本道を、
ずんずんと奥へ入り込んでゆく。計算され尽くした道幅や道のくねり具合。
蝿取り草のように入り込めば込むほどに脱出不能状態になって行く自分。
そして、突然、徹夜あけの体に二者択一が迫られる。
長い長い上りの階段か?それとも、エスタレータか?
徹夜あけの脳味噌にゃ、「乗らない」やら「引き返す」といった選択肢は見えなかった。
ずっと上り坂、しかもお土産買え買え攻勢にとってかわり、一瞬平坦な踊り場。
右には延々と続く階段、左はエスカレータ。平坦な踊り場に綿密で緻密な
作為的計算を感じる余裕はなく、足はエスカレータへ自動的に向かってゆく。
そして乗ったが最後、終着点は、鍾乳洞の入場券売り場。
駄目押しに、自動販売機の横に立つ笑みを浮かべた係員。出口は、ない。
1000円で大人券を購入して入場。
ちゃちいお化け屋敷のようなハリボテな入口もなく、いきなり世界は本格的鍾乳洞へ。
最初の説明書きを読むに、出口まで30分だそうだ。割と本気度高い。
って言うか、眠い。
入場券。なんていうか、ホントお勧めスポットだったりする。個人的に総合点高し。
ずんずん奥へ入っていくと、コリャ凄い感が体に戦慄を走らす。
外気とは一変、湿度は高いもののひんやりとした温度。
大人でも感じられる閉塞感は、子供なら一人で放り込んだら一発で泣くことだろう。
突貫工事のような工事現場専用足場は、地下水で濡れて滑りやすく、
暗く頼りない照明とあいまり、視点が下へ下へと行くものの、
一転、頭上では中腰以下を強要される鍾乳石が、だらりとぶら下がる。
進んで行くも行くも、全くイベントは発生せず、道に迷ったかと思い、
不安が広がって行きそうなそのとき、中空の部屋に出る。
緑やオレンジの光に照らされた鍾乳石と水溜り。
70年代テイストな神秘テイスト満載な演出に心が奪われる。
ふと横に目をやると、常駐解説員が、いた。
センサーでもついているが如く、おいらの目線のうつろいに、
的確に解説をつけてゆく。
おいらは思った。平日の昼とかも常駐してるんやろか。
今日はちなみに早朝とはいえ日曜日。夏休み明けとは言え、正直、ガラガラ。
でも、冷暖房完備、対人関係も良好っていうか、まるで無しなこの職場は、
わりとよさげな感じがした。
いやしかし、ずーと客くるまでどないしてるんやろか?
体力ゲージがMAX値近辺なら、ハイドインシャドーで隠れて、
解説員観察日誌なんぞ点けたい所だが、眠いのでズンズン進む。
5分ほど歩いては、名所アンド解説員のセットコンボが続く。
正直、このテイストはかなり個人的にツボにはまり、かなりいい気分。
この緑色主体のライティング、家でもボットントイレットの
メイン照明に使用したくなる気分。
コラムさん:欲望の緑。
そういや、今日の昼食時に入ることになる山奥の喫茶店も、
天井照明の感じが、そこはかとなく70年代的万博テイスト満点な、
プラステックな緑色で、んな感じに淡く緑に照らされる店内に、
深夜の期待族の如くフラフラと店内に入っていったのだった。
おいらのファブリットカラーは多分緑色なんだろうと、強く認識。
後日、部屋の予備照明を緑色に変更。不気味でかなり失敗ぎみ。
で、進んで行くと、今までの解説員は、この鍾乳洞が営業開始された当時は、
観光客無礼講親父にセクハラ(当時はこの表現無し)されたやろうなぁ、
てな感じの年齢のおばさん方だったのだが、何故かココだけ、腰の曲がったじじい。
この場所は、今までとは趣が異なり遺跡だったりする。
弥生人の住居跡で、下の方を覗き込むと割れた土器の破片が、
濃度の濃ゆい地下水によって溶かされ、地面と一体化していた。
ツツーと視線を移して行くと、解説が始まらないんで、
じじいは監視員、もしくは備品だと思って、すぃーっと通り過ぎようとすると、
ぼそぼそと語り始めるじじい。
正面に向き直り、納得にはうなずくという、理想的な客を演じるおいら。
で、一通りの解説を終え、さぁてと次に向かおうとすると、
思い出したかのように解説を続けるおやじ。
片足の体重移動を終え、次の一歩を繰り出そうとする爪先立ちを
きずかれないように肩を右へ左へと燻らせごまかすおいら。
ガイドのおやじに、説明途中に立ち去ろうとする所業を知られるのは、
将来の夢が「紳士」のおいらにとって、許されるはずは無いからだ。
だが、おやじの3回目のフェイントには、
すでに足が階段に乗っているという失態を犯していたため、
リカバリーの思いつかない脳みそに脊髄は反旗を翻し、階段を登っていった。
んで出口、休息所の長いソファーライクな椅子で仮眠を取ろうとウトウトしていると、
次に出てきた仲良し家族の女子高生ぐらいの子が、フェイントなおやじに
やたら受けていたんで、これも時代を見据えた次世代エンターティメントの形なのかと、
深遠な思考に陥ったりしてると、目が覚めたんで、出発することにした。
で、出口を探すと、2ヶ所ある。
片側は近道との表記、最近設置されたであろう小奇麗な看板。
片側は此方こそが正統派と主張せんとばかり、書道なフォントで「出口」とのみ表記がある。
年季の入った看板である。
威厳と尊厳とハッタリを重視するおいらは、正統派出口に足を向ける。
遠回りに曲がりくねった通路には、土産物屋が軒を並べているというオチが付いていた。
ちなみに、ここには併設の博物館が2件ある。尾長鶏のと、鍾乳洞の。
鶏の方は、徹夜明けにはキツイ香りだったのでサラリと流すだけにして
早々と退館を決断する。
で、おつぎの鍾乳洞のほうだが、入口からして、
ハリボテ&カラクリ感全開の展示品に、かなりメロメロになる素晴らしさ。
典型的な観光地的ハッタリ博物館に眠気も吹っ飛ぶ。
で2階に上がると、そこは原人コーナー!一言なにか?「ウパー」
現代人との脳みそサイズの比較展示は、勿論デフォルト設定である。
壁一面に描かれた、愉快な弥生人一家の想像図は、生き生きとした表情描写がすんばらしい。
一流に接したおいらの思考回路は活動を停止し、身をゆだねるしかなかったのだった。
で、出口には、これまでの此処の鍾乳洞に関する出版物が、
ガラスケースに纏められていたのだが、そのなかにレコードのシングル盤が。
日焼けしたジャケットには、美人な演歌歌手の写真。
タイトルは「龍河洞音頭」ちなみにB面は「女のいきかた」
聴いてみたい、ぜひとも。
で、最後のとどめ。通路と一体化した回避不可な土産物屋が待ち構える。
パチもののアイボはよしとして、プーチのパチも居た事にこの業界の深い深遠を垣間見る。
70年代的洋ピンな全裸ねえちゃんが表紙の、スケベ歌集なんてのもありまする。
階段を降り終えて、感想は「腹減った」。これに尽きる状態だった。
だが、土産物商店街には、おいらの心を満たす、エキゾチックな
四国に来たぞ!的な食料がなかったんで、そのままこの地を後にすることにした。
ガス欠が近いことに気がつき、近くのガススタンドに車を止め、
待合室でマターリしていると、観光案内パンフレットを発見。
すごすごと眺めていると、四国の真中あたりに、四国自動車博物館ってのを発見。
紹介の写真を見るに、ディノやら、ポルシェちゃんやらがあるではないか。
てなわけで、取り合えずココに向かい、今日は日曜日なんで、
平日の月曜日にゆっくり見物しよう。
んでもって、そこから近所の温泉を検索してそっちに向かい、
今日は旅館でマターリしよう計画が発動されるのだった。
なんか凄い感じがするぞ、自動車博物館!
ちなみに今夜の宿は、一番上の写真の文学館付近だったりする。
そして2時間経過。
そう、だった。のだった。其処には張り紙が一枚。
「四国自動車博物館は閉館いたしました」
どうやら、バブル期のリゾート計画だったらしく、頓挫した跡地周辺には、
なにも、なかった。
無駄に山を切り崩した、舗装もされていない、埃っぽい道路を引き返す。
で、しかたなく近所の温泉を検索するも、なし。
意味もなく車を走らす。道の駅に立ち寄るも、目標物となり得るに相応する情報も得られず、
ただただ、車を山奥へと走らす。
と、山の峰峰の間から、スケール感のあからさまに狂った巨大な人工物が!
良く見ると風車。しかも3本。やたらでかい。ほんとに巨大。
興味本位に接近を開始し、風車付近の山頂につく。
だがまだ見上げねばならない風車。言葉が見つからない。
写真見てくれ。
下に写ってる箱は軽自動車。この巨大感は写真では伝わっていないような気がする。
こういうのが、数本、山に突き刺さってる。当然、グルグル回っている。発電中らしい。
で、帰りしなに、極限まで腹の減ったおいらは、山奥の寂れた喫茶店を目視で発見。
しかも、前述のとおり、緑色の暗めの照明。
やたら古い家具調テレビや冷蔵庫が、現役稼動していたり、緑照明だったりで、
いい雰囲気の喫茶店ではあったが、料理(から揚げ定食)はイマイチだった、
具体的には、フライ物はカラッと揚げよう。だが量は多くて良心的かな。緑だがらよし。
このままだと、定住してまいそうなんで旅行計画をたてた。
とりあえず、四国一周というか、しまなみ海道をぐるんと廻って、
岡山のZガンダムを見て帰ろうと。んな訳なんで、西へと向かうことにした。
で、大自然に囲まれた気持ちいい感じの山道を走っていると、
「奥白髪温泉→」てな、赤字で書かれた、かなり古ぼけたヤバメな看板を発見。
宿泊施設もありゃ、一石二鳥でいい感じなんでそっちへ向かう。
が、山間の寂れた町を乗り越え、道が砂利道、んで、とうとう獣道・・・
でも数分置きに出てくる看板は、「奥白髪温泉→」。
注文の多い料理店が脳裏をよぎる。
獣&山道、道幅はギリギリ一杯&落下したらやばげ。死か、温泉か。
なにやら御神木らしき、地形と一体化した縄の巻かれた木やら、
巫女さんの持ってるお払い棒みたいのやらが地面に突き刺さってたりと、
オリエンタルで不気味チックな獣道、さっき通過したよな風景が、再びフィードバック。
C級怪談が脳裏を掠めつつも、看板は「奥白髪温泉→」。
狐にだまされているにも関わらず、毒くわば皿までなスポーツマンシップ精神にのっとり、
1時間以上の獣道を行きつく先に、階段の踊り場のような駐車場と、プレハブ工法な建築物が
いきなし目に飛び込んできた。久々の、やり遂げた達成感が、
僕だってできるんだ感が、心を満たす。アムロにだってできたんだから・・・
で、冷静に我に返ると、こんな山奥のプレハブ温泉に、駐車場一杯の
(って言うても5台ほどだが)車が止まっているのかの訳は、温泉に入ると一発で納得する。
温泉の説明っていうか、湯の出し方&温度調節のノウハウを、
おっちゃんにご教授願い、全裸マンになる。
ちなみに料金は500円だったりする。
いざ入ったりする。と、白濁した濁り系の湯がそこにあった。
わりとぬるい目の温度に安堵のため息をハフゥーとつき、マターリ空間を演出する、
多少、かなづかいと句読点の位置がいっちゃってる注意書きを傍目に、
ガラス越しの大空を見上げる。イイ。
一応、温泉水は飲めるそうなんで、原水の蛇口をひねり、両手で受け止めゴクリといく。
「イオウ臭せぇ!」なんか咽喉が、粉っぽく乾く感覚、あくまでも感覚が、体を襲う。
でも、健康にはかなりよさげな感じ、あくまでも感じ、根拠はなかったりする。
入った時は一人だったのだが、狭い場所に人が増えたんで、撤退を決意する。
で、上がって木陰の微風に吹かれつつポカリスエットでマターリといくのだが、
汗が本気で止まらない。ぬるい目のお湯だったにも関わらず、体がホクホク感一杯。
そなえつけの団扇も動因するも、汗が全然とまらない。やはりここは凄いのやも。
温泉経営のおっちゃんと駄弁り、付近の宿泊場所等の情報を入手し、出発する。
行きしなは必死で気が付かなかったのだが、
なんていうか、マジで道が細い。もしすれ違ったら地獄の後退。
そう、言葉通り転落死もありえるような道。なんとかすれ違わずに戻ることができたが、
車の運転に自信が無い人や、温泉の為なら死んでもイイという人以外は、
お勧めしないですね、此処。いいところだけど。
温泉主に名刺頂きましたんで、抜粋スキャニング。
温泉の効用か?ここに来る人は、ご主人を筆頭に、
皆さん無駄に健康っぽかった。
お馬さんやらお牛さんやらの戯れる川岸、迫り来る山。
まるで絵に描いたようなカナダチックな風景を横目に、西へと道を進める。
先ほどの温泉のおっちゃんのタレコミ情報で得た、宿泊施設の情報でもって、
そちら方向へ車を向けるも、門の前に「明日より休業」との張り紙が・・・
そういや世間一般では夏休みも観光シーズンも一段落な季節なんだなぁと、
夏の終焉を感じさせる寂しげな夕焼けに、身を持って感じたのだった。
そして、そんな時期に、ぶらり一人旅な自分の境遇に、幸せをグットかみ締めるのだった。
が、今夜の宿泊は、いったいどないなるんやろか?
で、カーナビで宿泊施設で検索、そっち方向へ向かうことにした。
チョイト道を巻き戻すこと30分、典型的な田舎の町に到着する。
丘にへばり付く民家やら店舗に、毛細血管のごとき道をウネウネすると、
わりかし立派で古風な木造建築が出現した、かなりイイ感じな建物。
名称はぁ「高知旅館」。高知に在るから高知旅館。安直だがいい感じ。
扉を開けて「すいませーん」と呼んでみると。奥のほうからおかみさんな感じの返事。
この旅館の内部、明治維新以前な感じの明治っぽい作り。イイかも。
で、泊りであることを告げて部屋を案内してもらうが、それはもう複雑な構造で、
畳の大部屋に、中抜け構造で、ああ典型的日本家屋。
やっと畳の部屋でゴロンとできるぞ、うひゃぁ、などと気持ちを高ぶらせ想像しながら
ついて行った扉の向こうには、典型的なベット付な、洋室があった。
たぶん、おかみさんは、気を利かせてくれたのだろう。洋室の方が好いだろうと。
まぁ・・・いっか。テレビを付け、各種充電機器をセッテイングしてから、
ベットにゴロンと横になると、スウィーッと睡魔が襲ってきた。
で、付けっぱなしのテレビに起こされると、時計は21時を過ぎていた。
ちなみに晩飯は自給、朝は出してね、と言う事で交渉をすませていた。
すでに田舎の町は、闇に包まれていた。んで、腹はかなり減っていた。
そういえば、近所にコンビニが在りますよ、と聞いていたので、散策すべく外に
出かける事にした。とりあえず行きしなに通過した車道に出ようと思いて、
坂道を下ってゆく。民家の明かりは、分厚いすりガラスと木の格子に阻まれ、
都会の倍の間隔で設置される街頭も、歩行者の足元を照らすという仕事を
必要最低限でこなすというペースな光で、町は、しっとりとした闇に包まれていた。
道の端の方では、飲み屋が閉店準備で、客をそれとなく追い出しにかかっている
光景が繰り広げられ、低く静まり返った町の中に唯一の喧騒を与えていたが、
それすらも、此方に届くまでにオブラートで包んだような幻聴のように減衰され、
この町の闇の構成要素の一つに成り下がっていた。
車もめっきり少なくなった大通りに出ると、常時点灯の広告ネオンの中に、
コンビニの看板を見つけ、其方へ向かった。こんな昭和に取り残されたような町でも、
やはりコンビニの商品ラインナップは均一化されたものであったが、
物資の補給には問題があったようだ。
飯もの系は、おにぎりが一個。
しかたがないので、その一個と、サブミリナル効果なパッケージに目が奪われたリッツと、
缶コーヒーをいそいそと購入して、そのコンビニから脱出し、徘徊モードに戻った。
瀬戸内海を超えてはるばるな田舎町の晩飯が、コンビニおにぎり。
という現実は、あまりにも旅の美学とのギャップがおおきすぎた。
よって、コンビニの袋をぶら下げたまま、さきほど見つけたものの
余りのみすぼらしさに回避した、定食屋に引き返すことにした。
みすぼらしい定食屋には、客は一人もいなかった、人通りも全くなく車の排気音のみが
時折こだまする大通りでは、それも当然のことでもあった。
店内では、経営者であり従業員で最高責任者でもある老夫婦が、座敷でマターリしていた。
あきらかに突然の場違い感炸裂なお客に、慌てたようにおばあさんが台所、いや、
厨房に戻るが、おじいさんは、相変わらず原稿用紙に手書きで、もくもくと文字を敷き詰めていた。
自分史だろうか、郷土歴史研究であろうか、とりあえず俗世界とは無関係で
居たいような、オーラを感じた。
メニュウやお品書きらしき物を探し、テーブル上を見渡すも、どちらかがソース、
消去法でもう片一方が醤油な小瓶しかみあたらず、視線を斜め上方に見渡すも、
見つからない。思い切って、店のおばあさんに何ができるか尋ねたところ、
秋刀魚か鰹のたたきができるというとの答えに、
迷わず秋刀魚をリクエストし、「飲み物はぁ?」と聞かれたのでビールをチョイスした。
はたと座敷に眼をうつすと、手の届く場所に新聞があったので、閲覧自由なものと
勝手に解釈して手に取る。高知新聞。高知の地方紙だから高知新聞。
一面を見るに、実は昨日の台風通過の際の大雨で、家屋浸水やら洪水で高知県は
大パニック状態だったようだ。こんな事は露知らず、のうのうと四国一周旅行と
しゃれ込んで秋刀魚の焼きあがるのを待つおいらは、かなりのしやわせものだなぁと、
客観的に評価できると思った。
そこそこの味、というよりも、そのまま家庭料理な秋刀魚と大根おろしと白米と
ビールを味わい外に出る。戦後の昭和な感じの、古い町並みを味わいながら帰路についた。
旅館に帰り、テレビをつけるとNHKで芸能人がツェップの移民の歌をカバーしていた。
続けて、火事場泥棒よかたちの悪い、国際悪徳商人が戦争を餌にぼろ儲けな
ドキュメンタリーを見ていると、深夜も未明な時間に成っていたので寝る方向性で
物事をすすめるも、蚊が多い、しかも全身痒い。しかも二日連続。
なんとか痒みが睡魔に打ち負けたのは、いったい何時頃だったのだろうか?
朝、携帯電話にセットされた着メロの、ボーン・トゥ・ビィ・フリーで目が覚める。
朝食に指定された時間を見計らい、階段を降りる。
この旅館の造りは、中庭をぐるりと囲むように四角形の細長い二階建てな
訳なのであるが、内部の通路がWIZのダンジョン並に複雑で階段と廊下が、
うねうねとごねごねな訳で、旅館の従業員を探して行くうちに当然迷う。
中庭越しに目的地は見えているのだが、何故か行き着けない。
戦国時代の城を思わせる造りに、こりゃ夜這い対策なのか?などといらぬ想像を
しているうちに、旅館のご主人らしき人を発見したので、あのぉーと切り出すと、
「あぁあぁ」てな感じで、指先が向こう側を指していた。
おいらも働き物の嫁さんもらって、こんな感じの悠悠自適な、ぐうたらライフを
おくりたいものだ。
朝食は、和風というよりも、一般的な日本人の朝の風景(の幻想)であった。
鮭の塩焼き、だし巻き卵、漬物、味噌汁。
ドラマに出てくるような朝食に一通り感動したのち、貪り食った。
チェックアウトの際、もうちょういこの辺りを散策してみたかったので、
車放置プレイの許可を得て、ウロウロしてみた。
旅館正面の道に沿って歩いてゆく。違う筋に行くには階段をのぼる。
典型的な町の電気屋さん。「和田ラジオ店」
典型的な町のおもちゃ屋さんのショーウィンドウには、
半紙に墨で達筆な毛筆で、「ゆうぎ王、マジックあります」と張られていた。
大通りにでると、田舎町的な謎の雑貨屋に遭遇した。
看板だけを見ると、本から玩具から食料品まで揃う夢のような店舗だが、
実情は食後のアイスクリームすら拒絶されるといった、釣り具メインな店だった。
が、通常の清く正しい釣具店の名誉の為に補足するに、釣具といっても
ザリガニ釣り+αな道具しか置いておらず、あくまでも、釣り気分を味わうと
いった程度の欲求しか満たされない、そう、釣った魚で空腹を満たそう等とは
思わない人が訪れて、困るぐらいの品揃えである。
だが、この店には通常の釣具店には無い魅力があった。
それは、遠い過去には、元駄菓子と、それに付随する程度の玩具屋の機能も
果たしていたことであり、今なお、その空気をふんだんに残しているのであった。
まず見回すと、賞味期限のかなり怪しげな当り付きの駄菓子がぶら下がっている。
んで、遠くの壁を見てみると、70年代丸出し蛍光色で、プラスチッキー
全開な、羽根突き巨大丸型サングラスやら、対戦型パチンコ玉打ち合い戦艦戦
ボードゲームやら、スタンダードな銀玉鉄砲やら、おいらよか一世代上な
アイテムが当時の陳列のまま、埃にまみれていた。
実際の話、店に入ってアイスクリームの冷凍庫を覗き込んでいるおいらに
「もう夏すぎちゃうとい、アイス売れなくってねぇ」と不器用に笑いながら
話し掛けてきたいい感じのおじいさんやから、当然売ってもらえるべき商品だが、
在るべき場所に在るべき物が収まっている、完結した空間の発するなにかを
感じたおいらは、見ているだけで満足することにした。又、ここに来ればそれでいいと。
なごり惜しくなかった、と言えば確実に嘘になるのだが、これで良かったと思う。
きっと、いいことをしたのだろう。
で、橋を渡り、公園を散策して、旅館方向へ戻る。
夜には気付かなかった町が見えてくる。
パチンコ屋、といっても、ゲームセンターのようなプレハブっぽい建物が、
幹線道路沿いに一軒。店名が「だるま会館」。かなり痛い。
手も足も出ない、もしくは身包み剥いじゃう、ってのが営業ポリシーだろうか?
とりあえず、いやな店名だ。町中にもこんな感じのパチンコ屋があった。
暇つぶしにはやっぱパチンコらしい。
「だるま会館」 怖い人に見つかると怖いのでこっそり撮影。
時計屋の隣に、目標の一つであった、薬局を発見。早速、蚊の痒みを押さえようと門をくぐると、
入口が別なだけで、隣の時計屋と店内で繋がっていた。しかも時計屋はCDも置いていた。
ショーウインドウに、CDのジャケット面を表にしてディスプレイしている店をはじめて知った。
当然店のCDラインナップにゃ多分売れ線と思われるCDしかなかったが。
蚊にかまれて痒いとの説明に、痒みを止めるだけなら、ムヒやらウナコーワで
十分だが、治すならコレ。と薦められた軟膏を購入すると、店のおっちゃんに、
デジカメを指差されたので、デジカメの解説を行う。
店のおっちゃんは、街中の幼馴染の間のあだ名は「ハカセ」であろうと思われる
感じのおっちゃんだった。ついでにパソコンとの連携に興味津々のご様子。
で、旅館の前の車にたどり着いたおいらは、この町を後にするのだった。
車中で地図とにらめっこした結論は、第一目標、木造の温泉旅館。
道後温泉でマターリ、しまなみ海道で本州に、そしてエウーゴ岡山基地にて
Zガンダムの偵察任務と、ストーリーを紡いだのだった。
で、地図をながめると、愛媛県までズズイと国道が伸びているではないか。
てなわけで、これから、下道ドライブとしゃれ込むことに決定した。
始めの一時間程は、舗装された美しい道を美しい風景をおつまみに走っていたのだが、
この綺麗な舗装道路が罠だった。そのうち工事中の看板が多発し、
その道中の殆どが、転落寸前な細い、迂回道路を通ることになった。
その道路工事の大型ダンプが、道の向こう側に見えてる内は、太いところでかわして行けば
良かったのだが、その細い道が直角以上の進入角を要求し、しかもそれが
右へ左へ上へ下へと曲がりくねり、突然目の前にダンプにエンカウントした時には、
そんな道を、ダンプがかわせる太い場所まで、バックで数十メートルも下がる
なんてことも要求されたんで、大いに精神的に疲れたのであったが、
そんな登り道を登りきった先には、素晴らしい景色が広がっていた。
でも、なんでこんな所(失礼)に人が住んでるんだろうか?
山間の山村。本当に山の奥の奥の村。ジュースの自販機前にて。
ただ、風の音だけが聞こえる。
で、そんな細い道も終わり、昼飯を探していると妙な看板を道端に発見した。
「ぬえ発祥の地(地獄沼)」
ぬえってたしか伝説の怪物だったような・・・どんなんやったけ?
そんな疑問を晴らすべく、その沼とその周辺にあろうと思われる観光地、
ぬえ博物館やら、ぬえ饅頭に思いを馳せて、ぐるりとUターンして脇道に逸れたのだった。
や、やられた・・・どんどん細くなる道はアスファルトから砂利道となり、
きっちり車一台分の幅の道は、くねくねと曲がりくねってゆく。
こうなったからには、意地でもぬえ発祥の沼とやらを、この目に刻み込んでやる。
と、思いつつも実際はUターンするにも、1時間以上立っていたので、
あきらめの感情が9割5分を占めていたからだった。
多分、ここでは無かろうかという感じの場所を通り過ぎてから、
ひょっとして此処かな・・・と気がつくも、道の細さ故、
もう戻れない、輝く青春の時っぽい比喩表現な状態であった。
しょうがないので、ずずいと山道を登って行くと、山頂にある村に辿り着いた。
まだ9月の上旬だというのに、もう刈入れをしている。
コレが、小学校の社会で習った「二毛作」なのであろうか?
そんなことより、ココは日本なのであろうか、といった感じの風景が広がる。
いや、厳密に言うと広がってない。山にへばり付く田んぼ、良く分からないが、
稲から米への精製過程の物が立て掛けてあったりで、
文化圏どころか、時代感覚までが、まるで不明。
しかも人が、人っ子一人として見当たらない。
おいらは夢を見ているのだろうか?朽ち果てた古い車のみが、
唯一戦後を感じることができる。一休みしたのち、この土地を後にした。
郵便局も、ジュースの自動販売機すらもない。住民も、とうとう目撃することが出来なかった。
そのまま道なりに進んで行くと先程、ぬえの道に入った場所から程遠くない場所へ
出てきた。おとついから続く、睡眠不足な体は、かなり疲れていた。
はやく温泉にいかねば・・・寄道せずに、道後温泉に向かうことにした。
つつがなく道後温泉に到着。観光案内所が車の中より確認できたので、
その辺でパーキングを探し、発見。車を突っ込む。
あぁ、観光地っぽく、観光客がわらわら居て、観光バスが曲がりくねった道に
横づけしている。変形ロボの手足の如く増築された旅館がそびえたち、
その隙間に、木造の旅館がひっそりと佇んでいた。
だが、車から降りて徒歩で歩くと、実際の目の前の風景は、泡の国だらけの風俗街であった。
路面電車の駅前にある、観光案内所に入り、旅館のパンフレットを物色する。
温泉旅館なんぞ泊った事がないので、そうそう、旅館に一人で交渉して行ったことすら
昨日が初体験だったわけなんで、まず相場から確認してみる。
うーん、パンフレットと睨めっこするも、イマイチ不明だし、というか、
疲れていたのだろうか、まったく脳みそが回転してくれなかった。
もう、はやく畳の部屋で寝転びたい。との思考は、受付のおっちゃんに、
全てを委ねるという結論を導き出した。受付にて、おいらは叫んだ。
「木造の旅館、しかも和室で、一人でゆっくりできる所。金額は問いません」
びびる受付。そりゃ、髭面で、不審な事このうえない若者の言うことや無いでしょう、これは。
まずは、金額で妥協点を見つけようと、ブラフを立てるために指定したと思われる、
五万円オーバーの高級旅館に、当方、「此処でいいっすよ、OK」。びびる受付。
早く、宿泊予約してくれと当方。ホンマに金持っているのか?という問いかけを
表情で雄弁に語る受付。でもさっさと電話しろと、当方。しかたなく電話する受付。
電話で話している受付の表情が、疑念から薄ら笑いにモーフィングしてゆく・・・
どうやら、シーズンオフのため今週は休業だったみたいだ。
受付のおっちゃんは、別に和室でゆっくりしたいだけなら、鉄筋建造物でもかまわんのでは?
と、しきりにスタンダードな超巨大ホテルっぽい旅館所を薦めるも、
こちらとは、男のロマン、そう、こじんまりした木造の温泉旅館を、細々と経営する
美人姉妹、もしくは未亡人+その娘、にちょっとした心のふれあい、いや心だけやなく
てもいい感じで、まぁ、とにかくココは男として譲れない所なのである。
埒が開かないので、先程のパンフレットで仕入れておいた情報より、
それっぽい所を指差し指定してみる。受付のおっちゃんは、こちらの心を
見据えたかのように、「期待するのと違うと思いますけど、構いませんか?」と、
数回、念を押した後にやっと電話して予約を取ってもらう事に成功した。
そして、紹介状と地図をもらったおいらは、車で旅館に向かうことにした。
そう、「割烹旅館 大倉」へと・・・
なんていうか、道後温泉って風俗店多い。しかもデカすぎ。
ひょっとして温泉街ってのは、基本的にそんな感じなのやも知れないが、
温泉初体験のおいらは、フーン、こんな感じかって感じで雰囲気ぶち壊しである。
だが、割烹旅館大倉は違った。木造で、しかもそこはかとなく歴史を感じさせる風格。
これで周りが住宅街でなかったら、完璧な佇まい。
駐車場っていうか、裏庭に車を止めて、と言うよりも車でのご来場は想定外っぽい。
んな感じの建物。写真がダメダメアングルしかねぇ・・・
んで、石畳の中庭を抜けて扉をあけると、ずっしりとした手応えとともに
ガラガラと音がする。あーこれこれ、日本の音。「すいませーん」と声をかけると、奥から
おばあさんが出てきはったんで、これまでの経緯を説明すると、まあ当然判ってるので、
部屋の方へ案内された。まぁ、廊下がカーペット敷きなのはアレだったが、
ちょいと入った所の、温泉前の応接間っぽいロビーには、家具調テレビ、その上には、
クネリクネッたアンテナが置かれ、そして横に置かれている、西洋人形のビニール感が、
イイ感じに、大阪万博テイストを醸し出している。暗目な照明も、時代に取り残された
感覚があり、マターリできそうである。だが、木造旅館建築ランキング的には、
昨日宿泊した、高知旅館に軍配を挙げざるを得ないのが、ちょいと残念ではある。
とりあえず、部屋まで案内されて中に入る。ああ、麗しの和室空間!
障子で仕切られた和室の奥には小型応接間と便所。そこから眺める景色は、
住宅街・・・だが地図を眺めるに、恐らく昔は、山の向こうに松山神社が見える、
そんなロケーションだったはずなので、残念だったりする。
室内は、ちょっとボロいかなぁ、んで、床の間に物を置きすぎ。
ソファーの手を置く所も年季が入りすぎて塗装が剥がれている。んやけど、
それも情緒があって良いものである。部屋を眺めていると、おばあさんが、
エアコンの聞き具合の按配を問うているのに気付き、
あと、これで美人姉妹だったら・・・などと現実に引き戻されるところである。
んでもって、まぁ忘れないうちにと、パソコンを取り出して、四国紀行を打ちつつ、
そーいえば、晩飯に海老が入ってたら困るので言うとかなあかんなぁやら
(実は筆者はどうやら海老・蟹(甲殻類)アレルギーで、喰ってるときは
美味しく頂けるのだが、後ほど劇な腹痛&嘔吐で苦しめられるのである。)
温泉の事やらを雑多に色々していると、「失礼します」と声がしたので、
「どうぞ」と答える。
※警告!!
この辺りから、当人がかなりボーっとしていたので、うろ覚え的記述や妄想が
必要以上に多分に含まれており、再現性の低い文章となっております。
障子をあけ、視界に入るのは、さっきのおばあさん、じゃなくて、ありゃ?
ジーンズになんていうのかな、ファッション音痴なおいらには説明できないが、
まぁ、若い服装、なんていうか、30前半の独身OLが、近所のスーパーに買出し、
ってな雰囲気の服装の女性が・・・?
立て膝で入ってきて、後ろ手で障子を閉めて、この度はご宿泊頂いて・・・てな感じの
挨拶の後、正座でお辞儀なんかされちゃって、しかもその一連の動作が、
和の人、そう、温泉旅館の女の人チックでおしとやか、なんであるが、
ちょっとうつむき加減で、多少焦り気味でもって、恥ずかしそうなしゃべり方との、
そのギャップが、あぁ、その、あのですねぇ、好きになってしまいました。
巷で有名な、あの、一目惚れ、です。胸がドキドキして、顔がまともに見れません。
はわわわわわ・・・・
あのぉ、食事の方のお時間は?
「い、一般的な平均の宿泊者で用いられる時間帯で用意して頂ければ・・・」
じゃあ、七時位でよろしいですね?
「わ、わ、それでそちらの都合が宜しければ、是非是非そうさせて頂きたいと存じます・・・」
お風呂のほうは如何なされますか?
「あ、え、入りますが、え、まぁ、もちろん・・・」
食事の前に入られますか?それとも食後に?
「あ、う、取敢えず、食前にも入りたいですます・・・」
それでは、温泉のお湯の方を入れて参りますので、お湯が入りましたらお呼びしますね。
今日は、お客様がお一人ですので、温泉の方、用意してませんでしたので。
そうそう、朝風呂は如何なされますか?
「え、あ、そうなんですか、その、気を使わずに、あの、その、大丈夫です・・・
申し訳ありませんです・・・」
もし、入るようでしたら、連絡くださいね、お湯、張りなおしますから。
「え、あ、そんなにまでして頂いて恐悦至極ですます・・・」
道後温泉本館の方へは、いらっしゃいましたか?
「前は通過して来ましたですけど・・・」
温泉の湯は此方の温泉と同じですが、是非、一度は入ってこられてみては如何ですか?
「あ、あ、はい、是非き、機会が在れば是非とも入らして頂きたいかと思います。です・・・」
「そういや、その、あの、最近はお客さんは少ないんですか?」
「いや、不快、いやその、深い意味はないんですよ、全く他意はなくて・・・はわわわ・・・」
昨日までは、お客さんが沢山いらっしゃって大変だったんですよ。
「え、あ、そんな時に無理やり押しかけて、その、え、申し訳御座いませんです・・・すいません・・・」
てな感じのうかれた受け答えを終了し、部屋の隅に立て掛けていた、大きな机を寝かして、
部屋の中央にセッティングする。んで、その一挙一同に見とれ、ポワァンとしている
緩みきった表情のおいら・・・
そんな無防備なときに、急に目を合わせられ、
「何か?」と、小首を傾げつつ、言われてしまって、気が動転しまくったおいらは、
急いで明後日の方角に視線を向けつつ、
「あ、いや、その・・・なんでもないですうっ!」
と言いながら、首を横に小刻みに振りながら、両手は怯えたリック=フレアー
(元WWFチャンピオン)の如く、違う違うをしていた。あぁ、恥ずかしい・・・
で、「お湯が入りましたら、連絡いたしますので」と言い残し、
去っていく足音が遠ざかっていく。
このとき、すでに脳内では、この旅館を経営するおいらとお姉さんとの
新婚生活の妄想が、相手の都合とは全く関係なく繰り広げられていたのであった。
ところで、何故、この後に及んで、名称が「お姉さん」のままか?と言うと、名前はともかく
身分(従業員?身内?)やら、独身?既婚?未亡人?やら、全くといって
聞くことが出来なかったからである。我ながらまったくのへたれっぷりである。
いやはや、お恥ずかしい限りです、はい・・・
んで、そんな夢想を脳内で繰り広げながら、ぽわぁん、としつつ、
ヴァイ夫で四国紀行をパコパコと打鍵していると、再びお姉さんが、
温泉の用意が出来たことを、知らせに来てくれた。が、そのときの
お姿が、なんとも、まぁ、温泉旅館というよりも、温泉ホテル的ユニフォームな
スカートがなんというか、お姉さんの足が長いのだろう、その、太ももが、ああ・・・
でもって、当然、温泉の場所が判らないおいらは、ドラクエ的にお姉さんの後ろを
ストーキングじゃなくて、ついていくのであった。
で、温泉。当然のなりゆきながら、貸切状態で、広くて、美しくて、中庭も見える。
ん、あ、そうだ、きっと、そろそろお姉さんの「背中を御流し致しましょうか?」
なんて声がもうじき聞こえるに違いない。んでもって(以下妄想モード)
お互い、顔を赤らめながら・・・あ、あ、あ・・・
なんてことは、当然、無く、一寸待ちすぎて、のぼせ気味なおいらは、部屋に戻る事にした。
ら、すでに部屋には、晩飯のセッティングに余念のないお姉さんが居た。
あっ!、ノートパソコンの電源入れっぱなし!
しかも、旅館探し慕情の、情緒ある木造で、美人姉妹が経営する・・・な文章がぁ!
表示しっぱなしになってるぅ!しかもパソコンは机のど真ん中に置かれていたものが、
端っこに寄せられているぅ!見られたのかぁ!見られてないのかぁ!うわちゃぁぁ!
「あ、すいませんねぇ、机の上物置きっ放しててぇ、あははは」
と即座にノートパソコンの蓋を閉めて、部屋の隅に転がす。自己嫌悪。
「湯加減は如何でしたか?」と、おいらの慌てっぷりとは関係なく、
旅館の人として至極当然な問いかけにも、
「あ、その、いい湯加減で疲れも取れて貸切状態で綺麗な浴槽で・・・」
と、我ながら会話のキャッチボールも糞も無い事柄を延々と・・・あぁぁ
で、入浴前に、机の位置を、パソコンのアダプターの行動範囲に合わせて、
かなり端っこにずらしていたのを気にかけていたお姉さんに、
「あ、元の場所に戻しましょうか?」と問い掛けると同時に机の端を持ったおいら。
んで、引っ張って元の場所に戻すぞって気合を入れた瞬間、なんと、お姉さんが、
反対側の机の端を持って、持ち上げようとするではないか、此方も当然持ち上げる。
コレが何を意味するのか、そう、初めての、二人の(愛の)共同作業!あぁ至福の時!
嗚呼、このまま永遠に机を運んでいたい。そう、行き先は、二人の約束の地まで・・・
だが、10cm程移動させ、センターが出たところで二人の共同作業は終焉を迎えた。
この、混沌とした数秒の間に、脳みそが出した結論は、
「プロポーズの言葉は、「君と机を運びたい!」にしよう」だった。全く意味不明。
「それでは、料理の方、お持ちしますね」との言葉で、我に返ったおいらは、
「え、あ、は、はいです」と答えるのが精一杯で、去ってゆく後姿に見とれていた。
そして料理が運ばれてきた。
一発目は、海老と昆布他の酢の物と、料亭っぽい味噌味の直方体の何かだ。
あちゃー、やっぱり海沿いの地域である愛媛県。海老が来たなぁ・・・
と机の上に並べられる料理を見つつも、お姉さんの一挙一動側を、ちらりと目線で追う。
「ビールか、お酒は、如何なさいます?」と聞かれたので、風呂上りでもあるし、
ここはビールをもらう事にした。「銘柄は・・・」と聞かれたので、ついつい言葉を遮って、
「いや、本当、何でもいいっすよ、なんでも美味いっていう感じな、味覚の自分なんで・・・」
と語りつつも、どうやら大失言であると気が付いた、おいらの心の中では、
「いや、ビールの種類は何でもいいけど、その料理は、あの、お姉さんが作ってくれた・・」
あぁ、自爆。自己嫌悪。しかも海老がある。
で、お姉さんが戻った後、ちびちびと酢の物を食べてると、少しの間を置いて、
次の料理を持ってきた。海老の塩焼き・・・
で、料理とビールを机の上に並び終えると、
「ビール、お継ぎしましょうか?」
あぁ、意表をつく予期しない嬉しい一言!
「天にも昇る気持ち」とは、こういうときに使うために生まれた言葉であろう。
広辞苑の使用例にも、「割烹旅館大倉のお姉さんに、ビールを次いで貰う時」と
記載しておいて欲しい物である。
「あ、はいぃ」とうわずった声で返事をしてコップを差し出すと、あぁ、ビールが
なみなみとコップに注がれてゆく・・・あぁ感無量。
んでから、再び、一人残されたおいらの前には、海老の入った酢の物と、塩焼きが残された。
この手の料理のペース配分が分からないおいらは、
もしや、これがメインディッシュと呼称される物であろうと仮定するならば、
これを喰わねば、餓死の危険はさしおいても、温泉の醍醐味の数割を差し引かれるのでは、
しかし海老を喰うと、確実に体質上、激腹痛&嘔吐が襲うのが目に見えている。
しかも料理を作ってくれたお姉さんに嫌われてしまう、いや、それは違う、
そうではなくて、やさしいお姉さん(すでに妄想内では、勝手にキャラができている)を
心配させてしまう筈。これはいかん。そう喰わねば、この真実の愛のため!
って訳で、海老の塩焼き、喰ってみました。美味いです。
バックグラウンドな背景やら、シュチュエーションは別としても、
塩のみの味付けにも関わらず、海老というか甲殻類特有の臭みが無い。
まったく白身魚な淡白なホンノリ風味に塩。こりゃ美味い。
この手の白身は、ポン酢が必然的に欲しくなったりするのだが、コレはこのままで
完全体をなしている、さくさくと喰ってしまう。
あ、いかソーメン&さしみは普通でした。
で、本日の個人的ベストは魚(種族不明)と豆腐とごぼうを醤油で煮込んだやつ。
んで豆腐の上に薬味(サワーって感じが口中に広がるやつ)がいい感じで、
おいらって都会っ子だから、魚とか薬味の種類とか判らないのが歯がゆいが、
なんともまぁ絶妙に美味しかったのでした。
ウマー!豆腐と魚とごぼうのハーモニー!
あと他にもあったような気がする、が良く覚えていなかったりして。
というか、喰うのに熱中して忙しくて、デジカメ記録を完全に忘却しておりました。
最後は、やはりメロン。まぁお約束とはいえ、旅館なんで、カタカナ果実よか
和名な果物がよかったのだが、まぁ、久々のメロンで満足しました。
メロン。サワーじゃなく、甘いってな感じのメロン。
で結論ですが、美味いから喰いきれた。と言ってもいい程のボリュームもありました。
しかも美味かったし、ビールついでもらったし、お姉さん綺麗だし。
んで、食後のマターリをたしなみ、さて、ちょっくら観光客気分でも味わっておこうかな。
などと、お出かけの準備をしていると、器を下げるために、お姉さんがやって来た。
てなわけなんで、このまま浴衣のまま出かけても、不自然ではないか?とか、
オビの結び方間違えてない?なんぞのQ&A大会を開催したのち、
食器を片付け終えたお姉さんが、後は部屋から出るだけなのに、
何だか話しにくそうにうつむいたまま、「あの・・・」と、話を切り出しにくそうに切り出した。
へ?。んで、しばらく間を置いてから話しにくそうに、
「大きな通りに出るところで、男の人が立ってる、かもしれないんですけど・・・」
で、しばらくの間沈黙。恥ずかしそう。あぁ、ひょっとして風俗の客引きの事かな?と感づいたんで、
「客引きですね?」と、おいらから助け舟をだすと、
「あ、はぃ、」と小さな声でこたえ、そして、顔を上げるも、目は、おいらから逸らしたままで、
「あ、あの・・・ついていかないでくださいね。」と。
語尾のほうは、か細くて聞き取れないような声で。
そして、照れているような後姿に、恥ずかしそうな感じの足取りにて、部屋を後にされた。
はい、いきませんよ絶対に風俗には。先ほど、財布の万札の枚数を確認したのは気のせいです。
と、心に誓う、というよりもなによりも、お姉さん、なんて可愛い人なんだろうか。
違う一面も確認し、ますます熱病に冒されていく、でも、とてもしやわせなおいらであった。
てなわけで、外出のため玄関に向かうと、そこには、一組の下駄のみがあった。
そう、それ以外なにも無かったのです。ちなみに、初・体・験です。下駄。
下駄。それは個人的にかなり謎の多い履物。
悪路走破性能、及び、隠密性は、履物業界における最低ランクをぶっちぎりであり、
履き心地も、足の裏に微妙にフィット。やら、各部の突起物が足裏のツボを刺激。
やらの豪華得点もなく、時代劇では鼻緒は頻繁に切れ、こちらへ歩み寄ろうという、
やさしさのかけらも無い。そう、きっと好きな歌は「マイ・ウェイ」で、
カラオケボックスでは、陶酔しまくって熱唱するタイプであると思われ。
あ、以外と歌唱力自体は評価できそう。まぁ、憶測だけど・・・
とりあえず、山の上に神社があるみたいなんで、其方へ観光することに。
下駄の作法がつかめないおいらは、実験しながら実証する。
・その一
振り上げた足の着地を、踵側の出っ張りから軟着陸させ、んで、指側の出っ張りを
接地。実況生音声は「カコン・カ・カコン・カ・・・・」
・その二
その一の逆、すなわち指先側の出っ張りから接地。
「カコ・カコ・・・・」
・その三
下駄底辺の2個の出っ張りを同時に接地。
「ガッコ・ガッコ・・・・」
・その四
下駄の指側の出っ張りのみを使用。
「カッコ・カッコ・・・・」
音声的には、「その三」がもっともソレっぽい音を再生するものの、
足裏の衝撃が垂直にくる為、かなり足に負担がかかる。続けての歩行が困難。
「その二」は、純粋に歩きにくいため却下。
従来の歩行習慣との近似値を得ることができる「その一」は、
楽ではあるのだが、なんというか、喧しい。コレは違うのではないかという
違和感が拭い切れない。周辺の人に、下駄歩行も判っていない、無粋な人だと
思われるのも癪だしなぁ。
「その四」は、高速移動時には間違い無くコレであろうかと。
というか、自然と前傾姿勢となりスピードアップ、あぁ滅茶苦茶しんどいわ。
深夜の神社は当然人は全然居なくて、下駄のみがやたら騒がしい。
ひっそりと退散することに。長い石段の昇り降りに、すでに足指がいたい。
で、次は、昼間に前を通過した道後温泉本館へ向かう。
例の風俗の客引きらしき人影を、遠回りに迂回して回避。
お姉さん、約束は守りましたよ。見てくれてましたか?立派でしょ、おいら。
などと心の中で呟く。
で、食後の散歩&土産物購入&まだ暑い日中を避けての観光などで、
人通りの多い街中を徘徊する。あぁ、殆どの人が浴衣だ。よかった、雰囲気が浮かないで。
でも、観察するに、帯の結び方にローカルルールが多すぎ。正解多数。
だが、下駄軍団は、どうやら一人、一人でカラコロ。
おいら以外はほぼ全員、旅館オフィシャル「ツッカケ」を装備。
さすがは割烹旅館大倉。と意味も無く感心する。
山頭火の石碑まで来て、そろそろ戻ろうかな、な時に、
いつもの海老を食した後の腹痛&吐気が体を襲う。
どうやら、ウマーな海老でもアレルギーは襲うようである。うーん、ヤバゲな感じ。
「ずんぶり湯の中の顔と顔笑ふ」 種田山頭火 街中に貼られるミカンパックマン「まもる」
何とか旅館まで帰り付き、勝手に扉を開け入る。扉を開けるガラガラ音も
また、なんと言うか、やかましい音ではなく、なんとも落ち着く、
いい音&リズムなのである。下駄の音といい、温泉の水の流れる反響音といい、
風呂桶を下に置いた際のカコーンな音といい、
きっと、ここまで計算して設計されているに違いない、ビバ!日本文化。
んで、部屋に戻ってパソコンで書き書きしていると、お姉さんとおばあさんが、
布団を敷きに来られた。そのときは本館見学やら、下駄のテクニックについての
雑談を布団を引いてもらう間の数分行ったのだが、心の中では、
「客引きについていかなかったヨ!えらいでしョ!誉めてネ!」と叫ぶおいらがいた。
二日連続で睡眠不足な体をいたわるために、今日は早く寝ることに決定。
だが、海老後遺症で腹が痛くて寝れない、という影響もあったが、
そんなことよりも、お姉さんと一緒の屋根の下で寝る、しかも客は一人だけ。
ってなシュチュエーションに、全身が萌えていた。
カーテン越しに外を見ると、建物の三階方向には、蛍光灯が付いた部屋が。
きっとあの部屋にお姉さんが居るのだろう。こっちを見てるかも。
電気をつけてると、ひょっとして、まぁあり得ないが、
「眠れないのですか?私もなんです。うふふ」なぁーんていう感じの訪問が、
万が一つに無いとも言いきれないような可能性を全否定するのは、人が生きる上に
おいて、寂しすぎるのではないだろうか。心豊かな人間性豊かな持ち主ならば、
「電気をつけたまま寝る」という、おいらの決定を微笑ましく、見守ってくれるであろう。
恥ずかしいことなんて、ちっとも思ってない。皆もするよね。きっと。
というか、本気で腹痛&吐気で寝れない。実はかなり眠気満々なのだが。
てなわけで、深夜未明に一通りの妄想が出尽くした後に、嘔吐を決行。
かなり気分は楽になるも、やはり妄想癖が頭をもたげ、今回はその上に、
深夜ハイ状態も加わり、結局寝ることができたのは、朝の四時頃だった。
「ざぁー・・ざぁーっ・・・・」
外から箒を掃く音がする・・・眠気は、無い。遠方より鐘の音。
時計を見ると、朝の六時。先程のは、本館の営業開始の鐘の音なようだ。
嘔吐したものの、いまいち気分が優れないので、本館に朝風呂でも行ってきて、
しゃきっとするかと起床する。
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※朝風呂日記
ってなわけで、道後温泉本館とやらに、朝風呂を決行することに。
で、下駄をカラコロと響かせながら、本館へと向かった。
途中、あからさまに風俗っぽい女の子数人とすれ違う。
で、コースなんやけども、風呂入るだけ(いわゆる銭湯)コース、
二階の大部屋で、お茶&煎餅でマターリできるコース、
三階の個室で、ブルジョワマターリコース、の三種類があったりします。
で、今回のチョイスは・・・
神の湯、二階席コース(中流階級向け)です。
早朝は原住民らしきお年より(風呂だけコース)ばっかで、
二階席は貸切状態でもって、いい感じ。存分にマターリいたしました。
二階席コースでは、風呂上りに、熱いお茶&煎餅(土産物サンプル)が添付されます。
当然といえば当然の事ではあるのだが、売店には、銭湯お約束の三種の神器である、
牛乳(ノーマル・コーヒー・フルーツ)、そしてサイダー類も取り揃えておりました。
早朝から二階席に来る人は少ないので、風呂上りの女性ウヲッチングが趣味の方以外は、早朝に。
「坊ちゃん、およぐべからず」
風呂に入ると、まず、この様に書かれた木札が目に入ります。
まぁ、ベタなネタですが、ついついワラタ。
まぁ、なんというか、普通の銭湯ですね、感じ的には。
明確に、温泉の効用を理解していらっしゃる通人以外は、
二・三階席コースで、歴史の一部分になる感覚を共有するのが吉だと思います。
まぁ個人的には、二階席コースが、お値打ち価格でお勧めですかねぇ。
しっかし、この土地の人は、悪意あふれる坊ちゃんの小説の内容を読んで、
まぁ、なんというか、呑気に構え、んでもって観光地にできるとは、謎である。
多分、坊ちゃんの内容の本質、おいらの解釈では、既存の勢力との争い、
であると考えているが、その辺りを見切っているのだと思う。
それに漱石さんの登場人物描写にいやらしさがないしね。
だが、本館の三階、坊ちゃんの間では、モデルになったであろう先生方の
顔写真の下に、例のあだ名(赤シャツやら白ヒゲやら)がご丁寧に、
本来本名があろう場所に掛けられたりなんかしてたりで、
関西人なら間違い無く名誉毀損で訴えてるとこだろうと、変に関心する。
後で朝食時に旅館のお姉さんにその話(名誉毀損ネタ)を振ってみたところ、
「ここの人は坊ちゃん読んでませんよ」
「ここは気候がいいんで皆さんおっとりしてるんですよ」
解説:愛媛県は手前の山脈で台風などが逸れる、瀬戸内の温暖な気候。
と、やんわりと受け流されてしまいました。
ちなみに、女湯にゃ、例の「およぐべからず」の看板はないそうです。
で、風呂から上がり、二階席から、朝の温泉街の様子を眺めながら呆けていると、
お茶が出てきます。柱にもたれて堕落しきった姿勢でおいしく戴きました。
で、先程の話に出てきた三階を見学した後に、帰りました。
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で、朝食を戴きました。
いやー、昨日もやけど、伝統的な日本人の朝食。
米に鮭に出し巻き卵。漬物やらピリッと辛いごぼうやらが脇を固める。
櫃からご飯をモリモリよそい、うひゃー満腹やなぁと。
手を後ろに着き、背中をそり返して、胃を腹部脂肪からの重圧から開放していると、
食後のデザート?の葛餅が登場。(厳密には食事中に参上だったのだが)
出来立ての柔らかい内に召し上がってくださいね。とお姉さんから忠告。
ああ、勿論、当然、そうさせて頂きます。実際、美味いです。
ようはキナコ系の餅なんだが、甘すぎず、いや、実際の所、甘味は少なく、
素材の味をじっくりとあじわさせてくれる、噛めば噛むほど味がでるタイプ。
んで、葛餅のくずって何ですか?のアホな質問にも丁寧に答えてくださったっていうか、
会話できた時間は、本当に幸せでしたよ。あぁ幸せ。ちなみに内容の方は、
緊張&浮かれている状態だったんで、完全に飛んでいますが。
最後、食器を引き上げる際に、写真とそのついでに名前を聞こうかと、
作戦を練り、会話の流れを頭の中で完全にシィミュレートしたのだが、
緊張のあまりきっかけをつかむ事ができなかった。
客観的に見て、おいらは、この手の会話やら、ずうずうしい依頼を
割とさくっとできる方だと思っていたのだが、まじ真剣に緊張すると、
何もできないもんだなぁと再確認。
女の人とも、普通の会話ならできるのだが、それ以上となると、
それにしても、だめだなぁ・・・ポックリ・・・
で、チェックアウトの9時まで、ごろりと横になったり、ソファーに座って外を
ながめつつ、真剣に「もう一泊するか否か」の事で頭が一杯であった。
個人的には、心象的にも、金銭的にも、全然問題なかったりするのだが、
今日も、宿泊客がおいら一人であった場合に、迷惑ではなかろうか?
ひょっとしたら、先日まで忙しかったそうなので、ゆっくり休みたかったはずでは?
そう、昨日もおいらは、飛び入りの客なのである、ああこれ以上、迷惑かけれない。
てなわけで、大いなる未練を引きずりながら、チェックアウトを決意した。
んなわけで、早朝のこんな時間に、岡山のZガンダムの場所をメールで聞いた際に、
親切に御教授して下さった、さまい氏とhime氏に感謝です。
荷物を纏めて、玄関まで戻る。
受け付けの場所にお姉さんが座っている。淡々と会計を済まし、そして挨拶を済ませて、
玄関の方に向かおうとしたとき、愛媛ガイドブックを「どうぞ」と渡してくれた。
これは、もう、なんというか、ただの冊子(定価600円)だが、
個人的には、三種の神器に認定、殿堂入りに決定とさせて戴きます。
今回の旅における一番の収穫。わーい。
で、カーナビに場所を登録して、いざ出発なのだが、時間的に余裕があるので、
しまなみ海道に乗るまでの途中で、ちょいと観光してみようかと。
駅の道にて、先程貰ったガイドブックで観光地を確認すると、割と近所、かつ帰り道に
美術館があることが判明。ちょいと本道を外れて目的地につくと、すでに美術館はなく、
「タオル記念館」という、地場産業の即売会場と成り下がっていた・・・
四国の博物館やら美術館にいく際には、事前の諜報活動をしっかりしといたほうが吉。
というか、そのときはブチ切れだったので、そのまま帰ったのだが、
今となっては気になるぞ、タオル記念館。
行き当たりばったりの旅には、好奇心と心の余裕がないとだめやなぁと思う。
しまなみ海道のパーキングエリアにて適当に四国土産を購入。
注意点として、美味そうだからといって広島の土産を買わないことに留意する。
ちなみに、しまなみ海道であるが景色は橋の上であるときにはいいが、
島を通過する際はいまいち&橋も割と短いので、
観光スポットと見た場合には、瀬戸大橋の方が個人的にはお勧めだったり。
で、次なる目的地、エウーゴ岡山支店へと向けて、中国自動車道をひた走るのであった。
だが、ここ三日間、あんまし寝ていなかったので、サービスエリアで車中仮眠を数時間ゲット。
しかし、サービスエリアって、仮眠組がやたらおおい。謎。
昼間から満員御礼で、ガードマン出動のパチンコ屋とともに謎である。
なんというか、高速のサービスエリアにて仮眠を取ることってのは、
ここまで普遍性の在ることなのだろうか?どういう状態になったらここまで
追い詰められるのであろうか?調査せねば、そのうち。未定だが。
で、信用ならないカーナビを頼りにして、なんとか降口まで到着。
で、今地図を見直したら、多分、遠回りなルート、しかも割高だったりする。
やはり羽拿租肉のカーナビは「アホ」である事を再確認。氏ね。でも壊れるなよ。
で、降口で周りを見渡すが、巨大なZの勇姿は見当たらず。
また、「エウーゴはこちら」てな感じの掲示板も見当たらず。
途方にくれると日が暮れるのでいやので、えいやぁで左に行くが、20分近く走ったところで、
ハズレとの決定を自分の心で採決し、道を戻る。まったくもって二択によわいなぁ、おいら。
で、復路+十分ぐらいして、巨大な箱?いや格納庫、そう絶対、格納庫!な感じの
人造建造物が目に入る。しかも、もう一寸先には道の駅。との看板も発見!
憧れのエウーゴ基地だ。うぉーでけえ。てなわけで、この感動を文章で表すのはちと難解やも。
いや、本当にデカイにもかかわらず、エッジが甘くなく精悍な印象。
なんというか、イイ物感が非常に高い。デカイにも関わらずヌルイ印象がない。
まぁ、この辺りは、実物大にしても面構成が成り立つ、デザインの良さであろうか。
遠回りをして時間がかかったイライラを、吹き飛ばす感動があった。
ビックリではなくて感動。これである。
写真を大きくしたところで、この巨大感は実感が持てない。実物を見に行ってくれたまへ。
後ろに見えるのは道の駅。建物は大きいが、手前に「コレ」があるとチャチな特撮っぽい。
足元に行くと、必然的に見上げることになる。チェーンを外すと動き出しそうなリアリティ。
で、30分ほど周辺にて感動の対面&撮影会を行い、腹も減ったんで、
道の駅の食堂へ向かう。んでミッション。hime氏よかメールで指令を受けた、
食堂のおばちゃんの息子さん作製の、ゆるいZガンダムのプラモが、
調味料置きの横に在るのを確認するためである。
しかも、そのプラモ、シールドの向きが逆らしい。注目点である。
で、食券売場の前にてメニューを熟考。やはりZラーメンとかコロニー団子とか、
そういうのは、ない。このへん富士Qのガンダムライドの勝利か。っていうか
遊園地と比べるのがそもそも失礼である。こっちは本物を目指しているのである。
フェイクの塊の中にリアリティを見出すテーマパークとは、根本的に思想が違うのである
とりあえず、ざるそばをチョイスして席につき、Zのプラモを挙動不審に
キョロキョロしてサーチするが、発見できなかった。残念。
どういう経緯で撤去されたのか、気になる今日この頃である。
んでもって、食後もソフトクリームを食いながら見学。
紫メタリック色のグロリアで参上の、ヤンキーな姉ちゃんセットも見入っている。
軽トラの商売っぽい、ほんわかな若夫婦もおもわず感嘆モードだ。
営業のカロバン二人組も、食堂に行く前に即席見学会。
ちっちゃい子供ずれの奥さん、子供がびびって泣き出しちゃいましたよ。
駐車場って横に広いにもかかわらず、Zガンダム寄りに止めてしまう人たちが
多いこと多いこと。謎の吸引力やね。
道の駅という性格上、ほとんどの方が、他府県やら通りすがりな人々だし、
ましてや今日は平日の真昼間なんで、Zガンダム目当ての観光客なんて、
おいらだけだろう、でも、本物は人を引き付ける魅力があるんだなぁと思った。
っていうか、真剣にデカイんよ。んで、安っぽくない。
そういえば、ちょいと気になった事。製作者の紹介の掲示板にて、
「製作者当人はガンオタじゃない好青年」的な記述があったのだが、
じゃ、ガンオタやらアニオタは好青年ではないのか?
解説者の身分制度感が「一般人>>>オタク」的な構図も見え隠れする。
まぁ、オタクのする事柄ってのが、一般人受けするかどうか、
すなわち内側に閉じた文化圏ってこともあり、円の外側にいる人には理解不能な
ことが多いってのもあるのだが・・・
今回の場合は、幸福な結果ではあったのだが、この手の偏見は根が深い問題やなぁと思う。
まぁ、そんな事より、すんごく感動するので是非一度、生で見てください。
三日間、御苦労さんっす>SVX こういった、ロングなツーリング用途には最適な車だと再確認。
帰り道も、案の定ていうか定理の如く、道に迷いつつも、なんとか無事に帰宅できました。
んで、夕方に帰宅。仮眠をとるも21時頃に目が覚め、テレビを点ける。
世界が変わっていた。
アメリカが燃えていた。
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